掲示板事件簿

このコーナーは掲示板でのやりとりの面白いものを抜粋しています。(将来、本にでも?)

あるわけナイトクルージング

掲示板事件簿も佳境に入ってきました。

ナイトクルージング 投稿者:大木繁雄  
 
 先日 神戸の夜景をみながらナイトクルージングを妻と二人で楽しんできました。

神戸はあの与っちゃんも通っていた某有名工業高校を卒業して初めて就職した思い出の地。

海上から窓越しにみえるポートタワーのネオンが高級ワインでポ〜トなっている似合いのカップルのワイングラスに反射して、それはそれは恐ろしい、いや素晴らしいワンシーン。

テーブルの上では伊勢海老が二人を祝福するかのように乱舞し、私の髪のような霜降り牛が 鉄板の上で躍動する。 

  「さー焼くど〜」

有名シェフの掛け声も 船特有の哀愁をおびた汽笛にかき消されてる。

  「ボ〜・・・」

高級「赤玉ボートワイン」を一口飲んでピンク色に頬を染めた妻の横顔がとても美しい。

造船技師の夫にはこの港の風景がよく似合う、と妻は私の横顔にうっとり。

  とつぜん
妻の瞳に涙がきらり

「コショウをそんなにかけたらダメ、ダメ、いつも言ってるでしょうが!」

夜のクルージング 投稿者:片岡 康雄  
 大木夫妻の夜のクルージング、映像が浮かんでくる描写、最高でした。大洲RCの本年度、直木賞ものです。

矢張り、男も女も夜の船ってムードありますよねー。

ちなみに先般、小生と与ちゃん、夜のクルージングいっしょでした。

鵜舟の漁り火に、鵜匠の船べりをたたくけたたましい音、最高でした。

そんな中、川面に映る与ちゃんの笑顔、絵になると思いませんか?

期待してます 投稿者:美和子  
設定は(海と川の違いはあるけど)ほぼ同じなのに 内容はまったく違いますよね。

大木さんの ゾクゾクするような表現にパソコンの前でくぎ付けになってしまいました。

掲示板事件簿風にいうと 

美和子は おもわず 胸に巻き付けたバスタオルを落とすところであった
といった感じでしょうか?

片岡さんの文章もリアリティーがあって 口にしたコーヒーを吹き出しそうになるくらい充分に楽しませていただきました。

夜景後半 投稿者:大木繁雄  
 それではナイトクルージングの後半を美和子様で。

 神戸の夜風は少しあまえんぼう。

彼の手をかるく握りデッキから夜景を観ている美和子の緑の黒髪にまとわりついて離れない。

 「いやーん くすぐったい、今はダメ!」 

美和子は彼の愛のささやきと勘違いして言った。

豊満な美和子は先ほどまでデイナール―ムで「伊勢海老のおどり」、「松坂牛」をたらふく食べ「豊満感」で気分が悪くなり夜風にあたっていたのである。

大観覧車の回転レインボウネオン、オリエンタルホテルの光のオブジェ、異国情緒あふるる今夜の神戸はまるで私、「夜景」に美しいと思う。

  そう思うでしょう「あまえんぼうの夜風さん〜」

なぜか?白亜の天使「CONCERTO」号は二度と神戸に帰ることはなかった。

その時  投稿者:美和子  
そんなことはあるわけナイトクルージングの後半がこんな転回にになると予想もしていなかった美和子は 掲示板の前で息をのんだ。

いっきに読み終えた美和子は何かを思いだしたように視線をそらせた。

そこには 夜のフェリーのデッキに一たたずみ 遠ざかる神戸の夜景を見つめる若き日の美和子の姿があった。

あのとき 美和子の耳もとを吹き抜けた風は 桟橋で 小さく手を振ってくれていた彼のあゆのしおやき?じゃなくて 愛のささやき だったのかもしれない

 それを感じとることができていれば 別れはなかっただろうと 今頃になって気づいた。

しかし、その別れがあったから 今の幸せがあると気を取り直した美和子は

”こんなことあるわけナイトクルージング”をプレゼントしてくれた夫の横顔に軽いキスをしながら 残った海老と松阪牛は お持ち帰りにはならないものかと考えていた。
              
完結編 投稿者:大木繁雄  
 いくらキムタク似の男前の夫とはいえ、そう簡単に初恋の彼を忘れることが出来ないことを美和子が一番知っていた。

軽いキスぐらいでは償えるものではない。 お持ち帰りがいる。

この近くの造船所で設計技師をしている彼と知り合ったのは美和子にもあった20歳の時。 

彼の洗練されたセンスと巧みな話術は国際級。

「サーラン ハムニタ、ミワコ チョアヨ〜」 

 美和子はこの時 恋にお蔦主税。

しかし破局はすぐに訪れた。カラオケデートをした時に、彼の歌った「岬めぐり」はいいとして、「浪速恋しぐれ」はやめて欲しかった。

大洲が命の美和子にとって「しぐれ」といえば「富永松栄堂のしぐれ」しか許せなかったのである。 

 時雨時の日曜日のことである。

夜風にふれて「暴満感」も無くなった美和子は席に戻るなり、ピカピカの鉄板を見て、オドロイタ!!
 
「伊勢海老の尻尾が無い!」
「食べ残しの松坂牛のスジも無い!!」
「 うそ〜あれも無い、これも無い!」
「なんも 無い!!」

手を口に当て「ホホホッホ・・」と笑みをうかべている美和子の瞳にうっすらと泪がうかんでいるのを担当シェフは見逃さなかった。

 「しまうのが 早やすぎたか・・・」

 夫への償いの土産が無くなった美和子は

 「これじゃ、持ち帰りナイトクルージングだわ」

とぶちぶち言いながらタラップを降りると新開地のけばいネオン街へと消えていった。
                                            完